スクリーンの空

パロディ

2018-01-01から1年間の記事一覧

追悼

幸運の意味を知っているから。不条理を知っているから。それが起きるということくらい分かっていた。だから君が自ら命を絶ったからといって、悲しむこともなかった。改めて驚くことはなかった。それは悲劇じゃなかった。僕は世界の残酷さを知っていたから。…

日差し

少し熱いくらいの日差し。時間がゆっくり進む気分。退屈を感じるのは良い兆しなのだと思う。(僕は生きているか死んでいるかの実感も湧かないまま消えて行くつもりだったのに。)空が綺麗だった。木々の色が深くなって、風が強くて、僕はさざめきが好きだっ…

解除

すぐダメになりそうだけど、出来るだけ毎日書く。そうすれば書かれた内容は自ずと、その日に偶然そう感じただけというニュアンスを含むようになる。これが数週間に一度となると、一回性の成長やら思想の変化やらといった趣になり、内容が煮詰まって重苦しく…

オタクと海に行くなどした

先日ツイッターで知り合ったオタクと海を見に行った。オフ会というやつ。 普通のブログっぽいこと(?)を書きます。 先週にもひょんなことから仲良くなった東大生のオタクと会ったばかりだと言うのに。注目すべきは、マジで人と遊ぶことが少ない僕に、一週…

ロートレアモン伯爵の文体で人間を殴るだけ

おや!君の剛健な身体に備わったミミズの様に太い神経にも、痛覚が備わっているとは知らなかった!しかし、自動機械の定められた文法に従って緊張した、普段なら盛りの付いた猫の尾の様によく動く表情筋や、僕の耳には優しいヒキガエルの様なうめき声で、僕…

中くらいの収束

これまでと違う言葉を使おうと思う。いや、そんな心構えは無意味で、だって同じ言葉を使おうとしたことなんて一度もなかった。線引きをするのは馬鹿馬鹿しい。これまでとこれから、それがずっと続いていくだけだ。ただ、もう少しだけ普通の文章を書こうと思…

変転

土埃が舞うように、それとも楕円形の光が溶けていくように。十五階建てのビルの、右から六番目の窓を照らす太陽。一歩ごとに眩くなって行く光線。円盤から聴こえるアリアに呼びかけられたように、力ないビニルは幽霊のように吹き上がる。二人の子供は水溜り…

愛していた訳でもなかった

新幹線が加速して、サティのジムノペディを聴いていたから世界が遠かった。電子版を流れる文字を眺めていたら頭痛がしてきたから目を逸らした。僕は自ずと心に立ち上がってくるものを、義務のように否定して生きていた。僕には感じるべき感情や、考えなけれ…

表面に踏み止まること

僕は映画を見ていて話の筋が分からなくなったりしない。YouTubeの下らない動画で笑ったりも出来る。音楽を聴けば、曲が自分の身体とどこかで共鳴していることが分かる。小説で作者の欺瞞や陳腐な図式性を批判することが出来る。文字の羅列を読み、それが理由…

野蛮なもの

人が他者に何らかの説明を求める時に多くの場合、自動的にある一つの暗黙の主題を設定してしまい、その時点で関係性は硬直に陥っている。それは時に最も下品な、しばしば権力を握る者による、意図的な弱者への圧迫であることもあるが、他方では自由なやり取…

色んな音に聞こえる長い溜息

サルトルは『存在と無』の中のもっとも見事な個所で、他人の実在という次元で、眼差しを機能させています。もし眼差しがなかったとしたら、他人というものは、サルトルの定義にしたがえば、客観的実在性という部分的にしか実現されえない条件にまさに依存す…

彗星

あと一歩を踏み込めば、僕はこの世界から消えてなくなる。誰かが少し背中を押しさえすれば、それは為されるだろう。目の前を轟音が通り過ぎる。だけど僕はまだ黄色い線の手前にいる。恐らく同じ時、どこか別の場所で、彼は五十八錠もの睡眠薬を飲み干した。…