未詳まで

同じ人

追悼

 幸運の意味を知っているから。不条理を知っているから。それが起きるということくらい分かっていた。だから君が自ら命を絶ったからといって、悲しむこともなかった。改めて驚くことはなかった。それは悲劇じゃなかった。僕は世界の残酷さを知っていたから。世界は僕の思う通りに運行しているわけじゃないことを知っていたから。それは不幸でもなかった。君のような人間にとって、人生に意味や希望があることは前提ではなかったから。僕らが大した仲でもなかったことだって関係しているのかも知れないけれど(僕たちはいわゆる友達を作れるような人種ではないから)、そんなわけで君の死は、ただ起きるだろうことの一つでしかなかった。僕に「どうして」と口にする気はない。僕には原因を説明するつもりも、価値を表明するつもりもないからだ。

 だからといって僕が何も感じなくなった訳ではない。むしろ以前よりはっきりと感じられるくらいだ。それは二度と再演されることのない音楽の停止の様なものだった。他に名前を付けてしまえば取り返しようもなく変質してしまう、比類なき終わりだ。ただ一回の出会いと、君と僕が存在した僅かばかりの中間と。そして残った時間は何も変わることなく広がっている。たぶん僕は純粋に物事を受け止めるようになったのだ。ただそれだけだ。不在の感触……さようなら。ほんの少しの言葉、僕が訪われた表象、さようなら。きっとそれだけだ。