青色だったと気付く

僕たちがお互いにいてもいなくてもいい存在でしかないという事実は、当然のことだって受け入れている。そんな関係は、或いは少し淡白なのかも知れない。いつだって世界は僕抜きで旋回している。そんな風に感じてしまうのは、目の前のこの人も、この人を含む…

或いは眠りながらのようにして

表象から別の表象へ。有用性なのか、それとも芸術的な、あるいは神秘的な、目的は分からない。だけど僕らは何かを望み、何かから望まれるだろう。そして裏切られるのだ。僕たち自身が表象の一部なのだという事実によって。僕たちの内で何かは存続し、何かは…

物語の話

公的言語は私的言語の比喩である。例えば、人生は無意味だ、と思う事は言語的な条件反射であって、そう思う時に感情に生じる直感は、人生が無意味であるという事実よりも遥かに恐ろしい地平まで延びている事があるのだ。公的言語は還元主義を暗黙の裡に含ん…

白昼

未だに電車に轢かれる夢を見る。眠っている時ではなく、ぼーっとしている時などに、ふと気が付くと自然に。僕は駅のホームの最前列に並んでいて、後ろの人間に突然、背中を押される。そして電車と衝突する瞬間、背中を押したのが自分自身である事を、僕は知…

曇り空の系譜

青く透明な空に、もくもくとした遮蔽物が浮いている、というイメージが重苦しさを余計に連想させていると思う。僕は白くて清潔だから好きだけどな、曇り空。 そういえば「色彩家は曇天の下でも美しい画面を完成させなければならない」なんて事をドラクロワが…

逆さまだったら台無しだ

自分の言葉なんてものを僕は軽々しく信用してないけれど、教養や一般論が、教養や一般論として浮いて見える文章を読みたくない。需要はあると思っているけれど、消化されていない知識は、なんだか気恥ずかしくなる。僕は妥当な結論なんて信じない。理屈と情…

自殺を正当化する夢ばかりみてた

堅苦しい事ばかり考えて狭苦しい知性が嫌になったから、どうにかしたいと思っている。でも僕より遥かにずっと賢い人でも、良く見ていると、その人に固有の苦くて苦しい一貫性の部分では、僕と同じくらい狭苦しいんじゃないかと思えてきて、少しだけ安心して…

空中散歩

相対的に幸せになって、偶然的な価値を追い求めて、それで良い気分になって、良い気分になる事で良い気分になれるだろうか。あの子供は絵を描いているけれど、もし視力が奪われてしまったら。誰からでも、何でも奪い取る事が出来る。当然の様な顔をして、状…

蓋然性とか

知識の説明や概念の整理をわざわざ自分で言語化しようという気力がさっぱり湧かない。好きな本とかアニメとか音楽について熱く語るのも何だか面倒くさい。理想としては、もっとメタフォリカルなイメージで一気に全体を分かった気になりたい。きっと僕の情け…

存在しない風

春の風の柔らかい悲痛さ。別に感傷的になるつもりはないけれど、感傷の方は勿論そんな事は気にせず僕の体腔に侵入し、具体的な記憶を想起させるのではなく、匿名の記憶の反映となって嗅覚の奥で風景を広げる。 言葉の消滅。沈黙。世界との接点をどこに求めれ…

落下

「ダメだ。頑張れば話が通じると思ってる所がダメだ。何となく良い気分になれる即席の慰めや愚痴でその場をやり過ごして、それを何らか深みのある思考だと思いながら自己肯定して日々のサイクルを乗り越える処世術、それがあいつが人生を賭けて堆積させた思…

異邦人

社会的、一般的に浸透しているコードと個人的な価値観の一致は偶然であり、言うまでもなく、この一致が正確であればあるほどマジョリティとして社会に違和感を感じる事なく生活する事が出来る。しかし社会的なコードから逸脱した主観の持ち主は当然、自らの…

みんな夢

かなり虚しいので何も思わない。自分の単調さにうんざりしている。どうせ何も出来やしないという不安。自分が過ちを犯しているという不安。同じ不安が繰り返されるが、何も感じていない事。絶望や目的を感じない事。自分自身の言葉が誰の役にも立たず、世間…

麻痺

扱っている言葉を変えたい。ここにいたくない。言葉を変えるのではなく、経験の方を変えたい。感覚その物を。僕の本質は自己を否定し続け、停止する事だ。それ以外には特に何の要素もないので、別人になったって構わない。全ての自分の感情を冷笑する人間が…

暴力表現

フィクションを仮構し、無秩序の中で、人々に定まった方向付けを与える事を創造行為と呼ぶならば、生み出された幾つもの「方向」は必然性を持たず、観念の数々は全くフラットな水平面上の、趣味や慣習からなる価値観の座標である。 例えば理性中心主義と、そ…

表象

たとえ世界がフィクションであってもフィクションの中に様々な感情の居場所を見付けられるという事自体を尊重しなければならない、と思う。というのも、それ以上のものは何処を探しても見付からないからだ。幸福や不幸のイメージによる諸々の価値観、即ち物…

焦点

『問題の意見が食い違う人はむしろ奇跡的に気が合う人と思い喜ぶべきで、大抵は問題の焦点が合わなくて、こちらは殆どの場合どうしようもない』という、思ったより遥かに簡潔な表現に出会い、拍子抜けしてしまったという事が先日あった。というのは、殆どの…

フィクション

物語作品の中の他者は、もうその時点である同一の世界観に所属させられる事で歪められた他者であり、恐らく物語というのは他者を都合良く解釈可能にする場を出現させる装置なのだ。それは他者と真に隔たっているという事を表現する形式ではないのだろうと感…

シモーヌ・ヴェイユの悲劇と詩

シモーヌヴェイユの著作を読んで個人的に考えた事です。 ヴェイユにとって、詩、即ち美の発見には恥辱、悪による実存の引き裂きが必要である。美とは我々をうっとりさせるだけではなく、現実の不条理と命の恐ろしさを見せ付けるものでもあるのだ。古代ギリシ…

意思疎通

僕は自分の思考や感情を少なくとも公共の言語によって順序立てて説明しようと思っている。しかし他者に於いてそれがどの様に受容され、どの様な考え方に落ち着くかは、僕の知る所ではない。異なる人間の意識との間に同一性を求める事は諦めるしかないのだと…

愚者

愚者は愚者の言う事にしか耳を貸さないし、愚者の言葉に共感し賛成する。その事に不満を言う訳にはいかない。人々は正しさを求めているのではなく、快い生活を求めているだけかも知れないのであり、基本的にその態度は否定されない。愚者が愚者の共感を求め…

顔を失った

この文章は以前色んな意味でとても疲れていた時に書き留めていたメモを纏めたものです。 再び世界がネバつき始める。その理由が僕には分からない。一種の神経症なのだろうか。確かに極度に神経質になっているのを感じる。目に付くものが尖り、色彩は煩く、直…

詩の発生

嘆きを嘆きとして表現するだけでは優れた詩にはならないと僕は思う。矛盾を抱え込みながら対立を乗り越えるか、対立そのものを肯定的に提示しなければならない、という気持ちがある。嘆き悲しむ者は、許しや報いを欲する事なく、美によって現実を受容し、美…

雨の日の天啓

プロローグ その日、僕は雨の降る中、誰もいないビーチで膨れ上がった溺死体が引き揚げられるのを一人眺めていた。性別不明の水人間の口、かつて口であったと思われるボソボソとした穴の中から鮮やかなオレンジ色の魚、カクレクマノミが一匹這い出てきた。き…